ハンガーの歴史
いつも身近にあるハンガーも、歴史を紐解けば古くから存在していることがわかります。私たちが使っているハンガーは、いったいいつからあの姿なのでしょうか?
和装の時代
日本では、和服を掛けたり干したりするために衣紋掛けや衣桁が使われてきました。収納するためではなく、衣類を乾燥させるために使われていました。
また、衣桁のもう一つの大きな役割には室内装飾が挙げられます。衣桁は家具としての役割が強く、漆塗りや蒔絵を施された高級品もありました。色彩の乏しい寝殿造の室内において、華やかな着物を掛けた衣桁が人々の目を楽しませていたことは想像に難くありません。
和服の収納に際しては、直線的かつ平面的なつくりのため畳んで行李や箪笥に入れることが一般的でした。そのため、日本の近代化が進むまでハンガーを使った衣類の収納はあまり見られませんでした。
和装から洋装へ
ハンガーの歴史と服の歴史には互いに関連性があります。文明開化を迎えた日本には海外から人々がやってくるようになり、ハンガーが洋装文化とともにもたらされました。 明治時代には産業や技術だけでなく、生活様式も大きく変化しました。洋装が普及する中で、コートハンガーが上陸したのです。当時のコートハンガーには厚みがなく平坦で薄いものでした。そののち、昭和20年以降にかけて洋服が主流になるにつれ、立体的なハンガーが欧米から伝わったと考えられています。平面的な和服ではなく、立体的な洋服を収納するためにハンガーの形も変わったと思われます。
近現代
昭和30年代後半になると、プラスチック素材が登場します。あらゆる分野でプラスチックが使われるようになり、それはハンガーも例外ではありませんでした。その結果、安価で大量生産できるプラスチックハンガーが日本中に流通するようになりました。その後、スチールやアルミなどの金属製ハンガーも登場し、現在では用途や好みにあわせた素材と形状が選べるようになりました。脱プラスチックが注目される近年において、天然素材の木製ハンガーは環境に対して影響の少ない商品といえるでしょう。
ハンガーは昔から、人々のファッションとライフスタイルに関わってきたプロダクトです。これから先も、大切なふく(服と福)をかけるモノとして生活の中に存在し続けることでしょう。
葉加瀬太郎さんがラジオで取り上げてくださいました。
平田オリザさんのラジオ番組に出演しました。