兵庫県豊岡市は市の方針として「ジェンダーギャップの解消」に取り組んでいます。
市の抱える課題解決に有効な取り組みの一つとしてこれを重視しています。
■「ジェンダーギャップの解消」に取り組む理由
では、なぜ「ジェンダーギャップの解消」に取り組むことが必要だとされているのでしょうか。
現在、市の抱える課題として人口減・高齢化が挙げられています。
現在の豊岡市の人口は8万人ですが、このままでは近い将来に人口が減少してしまうことが確定しています。
人口減・高齢化はまちづくりや企業の経済活動にとって大きな損失になります。
市はこの現実に向き合い、「ジェンダーギャップ」を人口減・高齢化の要因の一つとして位置づけ、その解決をはかっています。
そして現状からどうしていくかを未来志向で市民全員が考え、未来を創っていくという決意を持っています。
■具体的な活動内容
では「ジェンダーギャップの解消」とは具体的にどのような活動を指すのでしょうか。
ジェンダーギャップとは、性別によって決められた社会的属性や機会などの格差のことです。それらは古くからの慣習によって現代まで存在しています。
「ジェンダーギャップの解消」とは、こうした格差を解消することで豊岡に暮らす価値を高めながら、豊岡の活性化を目指すものであると私達は認識しています。
SDGsにも目標5に「ジェンダー平等を実現しよう」があります。
日本はジェンダー平等という観点から見ると世界的に遅れている国です。政府も取り組みを強化している中、豊岡市では最重要課題として自治体と企業が協力してジェンダーギャップの解消に取り組んでいます。
■弊社の取り組み事例
弊社も豊岡市のこの取り組みに賛同すると同時に、ジェンダーギャップを感じることのない組織を目指したいと考えてさまざまな取り組みを行っています。
例えば、男性も育児休業をとりやすい環境をつくる取り組みとして、昨年は弊社代表の中田が育児休業を取得し、それに続いて男性社員の育児休業取得の流れができました。
■豊岡市のジェンダーギャップ解消戦略会議
豊岡市のジェンダーギャップの解消戦略を作るための会議に参加しました。多種多様なメンバーが現状を把握し、将来のあるべき姿を描き、具体的な戦略を作るのが目的です。
第1回の会議は2020年9月に開催されました。内容としては下記のとおりです。
・なぜ、豊岡市がジェンダーギャップの解消の取り組みを行うのか。
・現状把握(無意識の偏見への気付き、高校生や20代の不安や意見)と共有。
・ジェンダーギャップが解消された場合とされなかった場合のシナリオ作成。
・「未来のために何を解決すべきか」という問題提起
“20代代表”として、会議に参加した弊社社員に参加後の感想を尋ねると「ジェンダーのみならず、年代も仕事も立場も異なる人たちが集まり、意見を交わしたことがとても新鮮でした!」とのこと。
2020年11月に行われた第2回の会議は、前述の内容を受けて「問題を解決するための具体的手段と未来図」について各委員が話し合いました。
4つのテーマごとに別れ、アイディアを出していく方式で行われました。
テーマ1:家庭・地域・職場におけるジェンダーギャップに対する市民の知識・理解が深まるには
テーマ2:地域において男女が共に意思決定・方針決定に参画するための環境整備が進むには
テーマ3:職場における意思決定ポジション(管理職・幹部職)の男女格差の解消に向けた取り組みが増えるには
テーマ4:家庭において、男女が家計責任とケア責任を分かち合えるには
委員からは具体的なポイントをついた提案が出されていました。
第3回の会議では、戦略を策定するためにさらに深い議論が行われます。
参加した社員からコメントをもらいました。
「2回目の会議では豊岡市の現在の状況を踏まえてどのようなことができるのか、どのようなことをしていくかということを『短期的なもの』と『長期的なもの』の2つに分けてメンバーで意見を出し合いました。
個人的には短期的なものはさっとできるものが多く、中長期的には予算や大人数で取り組むものもあるため、豊岡市と市民全員が危機意識を持ち、真剣に考えていかなければならないと感じました。
まずはこの短期的にできるどんな些細なことでも始めることが大切です。
これからの日々の生活の中でも意識していこうと思います。」
『どんな些細なことでも始めることが大切』
まさにそのとおりです。
意識改革のために、私たち自身も具体的な行動と目に見える成果に繋げていくことにコミットして参ります。
2020年12月に行われた第3回の会議は、これまでの会議で出された戦略ドラフトの共有および委員からの承認を得ることと、ワークショップを通してジェンダーギャップについてさらに理解を深めることを中心に行われました。
今回のワークショップは演劇を通して、自分とは違う立場の人の意見を考えるというものでした。テーマは「理事長にふさわしい人は誰か」。
Uターンで移住してきた20代の女性、地域でボランティア活動を行う70代の女性、そして元社長の60代の男性。この3役を演じながら、3名が直面した問題を解決するための話し合いが行われました。
それぞれ思想もバックグラウンドも違う役を演じることで、自分とは違う立場の人の考えを想像します。
3チームに分かれてのワークショップでしたが、結果は全チーム「Uターンで移住してきた20代の女性」が理事長にふさわしいという結果になりました。
若いから不安という意見には、経験豊富な年上がサポートするという回答などが見られました。特に印象深かったのは「日本人が人選の場を苦手としているのは、相互理解が進んでいないからだと思う。互いにコミュニケーションをとることが大切だとわかった」というある委員の言葉です。
コミュニケーションをとり、相互理解を深めること。これは、ジェンダーギャップだけではなく、様々な場面で鍵となる行動です。演劇を通して他者の意見を考える、という過程を経たことで得られた気づきのように感じられました。
最後には、各委員からの行動宣言が行われました。
参加した社員は「家事も育児も、本来は結婚した二人が一緒に行うもの。自分が結婚したときに、しっかりできるようにしていきたい。そして豊岡市の取り組みについて、会社を通してだけではなく自分自身からも発信していきたい」と宣言しました。
■まとめ
ジェンダーギャップが解消された未来がどんなに活気にあふれていて、されなかった未来がどんなに暗いものか。参加した委員は想像できたようです。なお一層ジェンダーギャップの解消を実現しなくてはならないと実感したことでしょう。
私たちも企業として活気あふれる明るい組織、地域社会を目指して、今後もジェンダーギャップの解消に向けた取り組みに積極的に関わっていく所存です。